② SCCTとVRリハビリ: mediVRカグラが脳と体を同時に鍛える新時代のリハビリ

 

 

SCCT(体性認知行動療法)を応用したVRリハビリ機器「mediVRカグラ」。脳と体を同時に鍛え、パーキンソン病・脳梗塞後リハや慢性疼痛にも効果が期待される最新リハビリをご紹介します。

 

体と脳を同時に鍛える新しいリハビリ —— SCCTとmediVRカグラ

リハビリと聞くと、「筋肉を鍛える」「繰り返し動作を練習する」といったイメージを持つ方が多いでしょう。しかし近年、リハビリの世界では大きなパラダイムシフトが起きています。それが SCCT(体性認知行動療法:Somato-Cognitive Action Therapy)です。

当スタジオに導入している mediVRカグラは、このSCCTの理論を取り入れた最先端のVRリハビリ機器です。従来の「体だけを鍛えるリハビリ」とは一線を画し、「体と脳を同時にトレーニングする」新しい形のリハビリを実現しています。

 

SCCTとは? —— 体と脳をつなぐリハビリ理論

人間の脳には、体のどの部分をどう動かすかを司る「運動野」があります。この運動野には「ホムンクルス」と呼ばれる体の地図が描かれており、手や口など繊細な動作を担う部位ほど大きく表現されています。しかし、病気やけがで体を動かさない期間が長くなると、この地図は曖昧になってしまいます。

近年の脳科学研究により、運動野の中には 「体をどう動かしているかを意識し、次の動きを考えるネットワーク」 が存在することが明らかになってきました。これが 体性認知行動ネットワーク(Somato-Cognitive Action Network) です。

SCCTは、このネットワークを活性化させ、「体を動かす」と「考える」を同時に行うことで脳の地図を再教育するリハビリ。言い換えると、「体を動かしながら心も鍛える」アプローチです。

 

mediVRカグラとSCCT —— 脳を動かす仕組み

mediVRカグラは、SCCTを現場で実践するための医療機器です。患者さんは座った状態でヘッドマウントディスプレイを装着し、VR空間内に現れる目標に手を伸ばす「リーチ動作」を繰り返します。

一見するとシンプルなゲームのようですが、実際には次のような高度な仕組みが働いています。

・点推定(Point Estimation):「どの方向に」「どの手で」「どのくらい動かすか」を頭で考えながら体を動かす必要があります。これにより、体性感覚野・運動野・認知ネットワークが同時に刺激されます。

・フィードフォワードとフィードバック:動作をイメージする力(フィードフォワード)と、動作の達成を多感覚で実感するフィードバックを組み合わせることで、脳の再プログラミングが効率的に進みます。

・ホムンクルスの再教育:繰り返しのリーチ動作を通じて、曖昧になっていた「脳内の体の地図」が書き換えられ、正確な動作が可能になります。

 

実際に期待される効果

・パーキンソン病:バランス機能や歩行の安定性が改善し、転倒予防につながることが報告されています。

・脳梗塞後のリハビリ:動かしにくかった手足が、VRを使った繰り返し練習で改善した事例があります。

・慢性疼痛:痛みの予測シグナルを遮断し、運動を繰り返すことで痛みの悪循環を断ち切る効果が期待されています。

・高齢者のフレイルやサルコペニア:座位で安全に行えるため体力が低下した方でも取り組みやすく、姿勢保持や体幹機能の改善を通じて日常生活動作が向上します。

・小児の発達支援:ゲーム感覚で楽しみながらトレーニングできるため、注意力や協調運動が自然に育まれます。

 

研究が示す裏付け

実際の研究では、mediVRカグラを用いた座位でのリーチ動作によって、体幹深層筋(特に腹横筋)の活動が通常の運動よりも高まることが示されています。これは、VR環境では自分の体を直接視認できないため、脳が予測に基づいた姿勢制御を行う必要があり、その結果として体幹の安定性が強化されるのです。

また、慢性期脳卒中患者を対象とした研究では体幹機能とバランスが改善し、歩行にも良い影響が出ることが確認されています。

 

まとめ —— SCCTが描く未来のリハビリ

従来のリハビリは「筋肉を鍛える」ことが中心でした。しかし、これからは 脳のネットワークをどう再構築するか がカギになります。

SCCTとmediVRカグラは、まさにそのためのツール。体と心を同時に鍛えることで、病気やケガからの回復だけでなく、「転倒予防」「姿勢改善」「認知機能の向上」といった幅広い効果が期待できます。

 

私たちのスタジオでは、この最先端のVRリハビリに加え、ソーラーポールによる運動と栄養を組み合わせ、みなさまの健康づくりをトータルでサポートしています。

 

リハビリは「つらいもの」から「楽しく脳を育て直すもの」へ。未来のリハビリを、ぜひ体験してみませんか?

 

参考文献

・Gordon EM, et al. A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex. Nature. 2023;617:351–358.

・Kitano M, Nakamoto M, Kawanishi K, Hara M, Kudo S. Analyzing muscle thickness changes in lateral abdominal muscles while exercising using virtual reality. J Phys Ther Sci. 2024;36:372–377.

・Salgueiro C, Urrútia G, Cabanas-Valdés R. Influence of core-stability exercises guided by a telerehabilitation app on trunk performance, balance and gait in chronic stroke survivors: a preliminary randomized controlled trial. Int J Environ Res Public Health. 2022;19:5689.

・VRを活用したリハビリテーション. 日本内科学会雑誌. 2021;58(6):864-867.

・VRを活用した新たなデジタル治療:体性認知協調療法. 総合リハビリテーション. 2022;50(4):351-355.

・ゲームがつくる患者の未来 ─リハビリにおけるVRゲーム技術の応用─. 日臨麻会誌. 2022;42(1):106-110.

・仮想現実(VR)技術を用いた離床練習. Early Mobilization Journal. 2022;10:1-5.

・仮想現実(VR)技術を用いたリハビリテーションは慢性疼痛患者の福音となるか? 日本運動器疼痛学会誌. 2021;13:90-93.